適時開示アワード2017 で大賞を取った東芝が、今年も超ド級の大砲を抱えてエントリー。
今回の調査は、証券代行業界に衝撃が走った「先付処理」問題と、当社が国外の一部の大株主らに対して議決権行使を断念するよう圧力をかけたされる「圧力問題」の2部構成。メインコンテンツは後者となる。
調査はエフィッシモおよびSuntera (Cayman) Limited (以下、「請求株主」という)が当初、当社経営陣に要請していたもので、当社は「圧力問題」については、監査委員会が外部の弁護士事務所を起用して調査を実施して疑義が認められなかったのだから、さらなる調査の必要は無いと主張していた。
これに業を煮やした請求株主は、さらなる調査を行うべく臨時株主総会にて、当社および請求株主とも利害関係を有しない調査者を選任する議案を提出。これが無事、可決されたことで本件調査が進められる運びとなった。
そして請求株主側選任の調査者による調査報告は、当社監査委員会主導の外部調査とは真逆の結論へと至ることとなる。
そもそも今回の「圧力問題」の裏に、当社は2015年の不正会計問題以降、株主構成が大きく変化し、外国投資家の比率が38%から72%に増加してきているという背景がある。これに伴い、当社に対する株主の要求は増す一方。経営陣らの国外株主とのコミュニケーション能力もさらに改善が必要となっていた。
請求株主側調査によれば、こうした環境の変化に対して当社経営陣が行ったのは、株主との積極的な対話などではなく、経産省および経産省幹部が「丘の上」と呼んでいた首相官邸への協力要請だったという。
パフォーマンス不足を指摘されていた経営陣に対して株主権の行使もちらつかせ出した海外投資家ら。これに対して、経営陣は経産省を通じて日本国政府に、改正外為法を適用させてまで経営陣の意に反する海外投資家の権利行使を止めようとするなど、「じゃあなんで上場してんのよ」レベルの信じられない株主コミュニケーションを炸裂。
報告書はこの他にも菅官房長官(当時)の超強権発言や、元テスラ社外取というスーパーコンサルタントの唐突な登場など、斜め上のガバナンスを楽しめるコンテンツが盛りだくさん。「典型的な日本の大企業病」が一気に読める、徒労感あふれる名作だ。 |