Disclosure Award 2021(適時開示アワード 2021)

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2021年 ノミネート適時開示書類一覧

  1. テラ「過年度の適時開示の訂正等に関するお知らせ」
  2. グローバルウェイ「株式分割及び株式分割に伴う定款の一部変更に関するお知らせ」
  3. モダリス「大株主による制度ロックアップ違反の追加情報について」
  4. メタリアル「特別調査委員会の調査報告書公表に関するお知らせ」
  5. ハイアス・アンド・カンパニー「第三者委員会の調査報告書公表に関するお知らせ」
  6. 東芝「会社法第316条第2項に定める株式会社の業務及び財産の状況を調査する者による調査報告書受領のお知らせ」
  7. Casa「特別調査委員会の最終調査報告書受領及び公表に関するお知らせ」
  8. 五洋インテックス「外部調査委員会の調査報告書の公表に関するお知らせ」
  9. タカキュー「第72回定時株主総会第1号議案(剰余金の処分の件)無効のお知らせ」
  10. 新生銀行「(開示事項の変更)当行株式に対する公開買付けに関する意見表明の変更(中立) および臨時株主総会開催中止に関するお知らせ」
  11. SBIホールディングス「調査報告書 (公表版):SBI ソーシャルレンディング株式会社」
  12. 山口FG「社内調査本部による調査報告書と今後の対応方針に関するお知らせ」

ノミネート番号:1

銘柄コード:2191テラ
[PDF] 過年度の適時開示の訂正等に関するお知らせ
使えるハコは最期まで

2018年にも「ファイナンス中毒 前代表の闇落ちストーリー」としてノミネートしていた"いわくつき"企業が、今年もそのポテンシャルを遺憾なく発揮。

2020年から続くコロナ禍において、ネット上でもしっかりその実在性が疑われてきた架空の会社との、存在しないコロナ製薬事業を当社は次々に開示。
一時は100円台であった株価を1,000〜2,000円レベルに持って行くことに成功していた。

その後、本開示をもって「1年間の期間において当社が行った適時開示60件を確認した結果、合計24件の適時開示資料においてその一部またはその全部に事実と異なる内容またはそのおそれがある内容が記載されていた」という、ソルガムもびっくりの報告を行なった当社だが、テラと書いてハコと読むタイプのウォッチャーは地蔵のような眼差しで、SNS上での告発を眺めるのであった。

こうして過去の大量の適時開示資料で制作された大嘘ドラマ台本の訂正はわずか19ページの1文書で行われることとなり、令和になっても「ああやっぱりウソで金集めるのはコスパいいんだな」という事実を物語るに十分だった。

ノミネート番号:2

銘柄コード:3936グローバルウェイ
[PDF] 株式分割及び株式分割に伴う定款の一部変更に関するお知らせ
東証に挑戦し続ける錬金術師

以前から自社の適時開示のタイミングに合わせた株の売買がみられていた会長が、今年はSNSに「煽り系経営者」として登場。

本件開示は1株を2株に分割することを発表したものだが、実はその分割のわずか1ヶ月前に3分割。 そのわずか1か月半前にはさらに5分割されていた。

しかもその間にも、業績上方修正の開示を出した、そのわずか2日後にさらなる上方修正を行う旨を開示するという信じられない業績管理を行うなど、東証にケンカ上等の開示吊り上げクロスプレーを展開。

そんな「短期集中ミニライブドア」とでも言うべき当社の開示状況だが、当時のライブドアと異なるのはイマがSNS 時代であるということ。
開示施策の連発に合わせて会長はSNS でも自社株の材料になりそうな「煽り系」発言を連発し、確かに株価も一時期吊り上がった。

その後の展開は火を見るよりも明らかで、端的に言えば会長は株を売却し、株価も大きく下落。
令和のイナゴ事情も、平成はまだ終わらないのだなあとしみじみ感じさせるものであった。

ノミネート番号:3

銘柄コード:4883モダリス
[PDF] 大株主による制度ロックアップ違反の追加情報について
ロックアップは「マナー」なの?

上場直前に行った株式の割当てを受けた者は、当該株式の上場により短期利得を得やすいことから、新規公開株式の取得者との公平性をケアするために株式を一定期間売却できないようにする、いわゆる「制度ロックアップ」が取引所規則によって求められている。

しかし、当社はロックアップ確約書を交わしていたはずの著名個人投資家が、当社に一切の通知をせずにロックアップ期間中に当社株式を売却していたことを株主名簿から発見してしまう。
こうして発覚したロックアップ違反は、違反者が投資家界隈で有名であったこともあり、大きな話題に。

結局、違反者はロックアップ解除時以降の想定売却収入と実際の売却価額との収入差額、および、取引所や当局からのペナルティ予測額の合計として、4.84億円を自主的に当社に対して支払う旨の提案を行い、当社はしぶしぶこれを受諾するという前代未聞の事態に落ち着いた。

今年はこうした、取引所規程や内規に定められた制限期間の間に、有名投資家や実業家が「誤って」株式を売却してしまう事例が複数発生している。

発行企業側と投資家との間で、現状は違反した際のペナルティ、もしくは、違反を防ぐような制度が何ら担保されていないことも問題視されており、これを大口投資家の「マナー」に帰すべきレベルの問題なのか、個人投資家・公認会計士の間でも議論の的となっている。

ノミネート番号:4

銘柄コード:6182メタリアル
[PDF] 特別調査委員会の調査報告書公表に関するお知らせ
「これって○飾ですよね…」

むしろ社名を「ロゼッタ」と表示しないとピンと来ない当社は、自動翻訳ソフトの開発およびサービスの提供を行っている会社。

ちょうど今年5月には「GU事業についての会計処理訂正および同訂正に伴う2021年2月期関連書類訂正に関するお知らせ」という適時開示において、研究開発費の資産計上可否について監査法人と揉め、四半期報告書と決算短信を訂正することとなって不貞腐れていた。

しかし、それは予兆だったのか、10月には他の事業についても同様の疑義がみられるのではないかとの指摘が「外部機関」から会計監査人および監査法人になされて特別調査委員会を設置。本報告書はその調査によるものである。

報告書内では、たとえば「T-4PO」という開発案件においては、経理部MG(退職済み)からの相談を受けた子会社顧問の会計士が、この研究開発に要した人件費等の資産計上に対する疑義を提示していたところ、CEOがこの見解を示した会計士を「原理主義」と断罪。資産計上は「監査法人とコンセンサス済み」として費用化先送りを指示した。

だが、その監査法人はCEOらに対して、それらのコストは開発案件の重要性の高まりに乗じて「費用計上すべきものがあるかどうかを検討する必要はあるかと思います。」と返信していたメールも発覚している。
この他の案件も含めて外部専門家・経理部などの懸念の声を都合よく無視した会計処理がトップ主導で進められたことが伺える報告となっている。

投資委員会の緩すぎる規程など、ソフトウェア研究開発において収益性に関する経営陣の検討の甘さを指摘してきたこの報告書では、当社の行為を意図的な不正とまでは認定しなかったが、そもそも当社は創業以来、「ソフトウェア制作費用をソフトウェア資産として計上する際、改めて会計基準等の規定する将来の収益獲得や費用削減の確実性という観点について十分な検討を行えていたとは認めがたいものであった。」としており、会計監査人に対して情報を適切に伝えないまま、会計基準等に関する知識不足のまま突っ走りがちな当社の構造を問題点として明記。

これらの検討により、費用化をラフに先送りされていた研究開発費を訂正し、費用処理。前年度決算は結果的に最終赤字に転落することとなった。

本報告書については、「ソフトウェア会計基準の教材としても読まれるべき」との声も出てノミネートされた。

ノミネート番号:5

銘柄コード:6192ハイアス・アンド・カンパニー
[PDF] 第三者委員会の調査報告書公表に関するお知らせ
2億4千万の契り

上場廃止となったLCA 出身者が社内取締役7名のうち6名を占めていた当社。
本報告書以外にも既に上場以前からの不適切会計が判明しており、この適時開示の後に出る最終報告を受けて、東証は「同社では、同社元代表取締役社長を含むほとんどの取締役が、上場審査をすり抜ける目的で不適切会計について関与又は認識するなど、内部統制が無効化されていた」と当社株式を特設注意市場銘柄に指定している。

本件開示は、当社で次々と明るみに出た一連の経営陣の不正により、当時の代表取締役および取締役1名が辞任することとなり、その後新たに就任した代表取締役(以下、この3名を「旧役員3名」という)が就任翌日に、職務権限を超える2億4千万円もの支払約定書に、勝手に署名した可能性が判明したことについての調査報告。

このたった1枚の約定書の背景を調査するにあたって、委員会が紐解かなければならない歴史は2005年にまで遡ることとなった。(ただし、旧役員3名らは、当社に眠っていた遠い過去の情報を、意図的かつ事後的に保存期限を設定して削除している。)

当社は2004年度末に、LCAリコンストラクションの代表と従業員が同社から独立する形で設立。 約定書を交わした相手(a氏)は、その独立にあたって、また、独立後すぐの売上が立ちづらい環境での当社の資金繰りを支援していた人物であった。

以降、調査報告書においては、このa氏に旧役員3名が「龍が如く」世話になる様を、濃い目の黒塗りを交えて描いている。

a氏は、当社の過去の不祥事が明るみに出た結果、旧代表らが取締役退任を要請されるに伴い、当社と旧役員3名らとの関わりが無くなっていくことに危機感を感じたのか、旧役員3名に対して、過去の投資トラブルなどを精算するため金銭の要求を始めていく。

こうしたブラックな人間模様に、大事なところで絶妙に絡まる黒塗り資料とが合わさり、芳醇な漆黒の香りを漂わせた本報告書も適時開示アワード2021に文句なしノミネート。後半ではa氏が万一、この約定書を法廷に持ち込んだ際に、旧役員らが退任した後も当社がこの金額を支払う命令が出る可能性があるかを慎重に検討している部分があり、こちらもコンテンツとして楽しめる内容となっている。

ノミネート番号:6

銘柄コード:6502東芝
[PDF] 会社法第316条第2項に定める株式会社の業務及び財産の状況を調査する者による調査報告書受領のお知らせ
よくこんな経営陣でグループ維持出来んな

適時開示アワード2017 で大賞を取った東芝が、今年も超ド級の大砲を抱えてエントリー。

今回の調査は、証券代行業界に衝撃が走った「先付処理」問題と、当社が国外の一部の大株主らに対して議決権行使を断念するよう圧力をかけたされる「圧力問題」の2部構成。メインコンテンツは後者となる。

調査はエフィッシモおよびSuntera (Cayman) Limited (以下、「請求株主」という)が当初、当社経営陣に要請していたもので、当社は「圧力問題」については、監査委員会が外部の弁護士事務所を起用して調査を実施して疑義が認められなかったのだから、さらなる調査の必要は無いと主張していた。
これに業を煮やした請求株主は、さらなる調査を行うべく臨時株主総会にて、当社および請求株主とも利害関係を有しない調査者を選任する議案を提出。これが無事、可決されたことで本件調査が進められる運びとなった。

そして請求株主側選任の調査者による調査報告は、当社監査委員会主導の外部調査とは真逆の結論へと至ることとなる。

そもそも今回の「圧力問題」の裏に、当社は2015年の不正会計問題以降、株主構成が大きく変化し、外国投資家の比率が38%から72%に増加してきているという背景がある。これに伴い、当社に対する株主の要求は増す一方。経営陣らの国外株主とのコミュニケーション能力もさらに改善が必要となっていた。

請求株主側調査によれば、こうした環境の変化に対して当社経営陣が行ったのは、株主との積極的な対話などではなく、経産省および経産省幹部が「丘の上」と呼んでいた首相官邸への協力要請だったという。

パフォーマンス不足を指摘されていた経営陣に対して株主権の行使もちらつかせ出した海外投資家ら。これに対して、経営陣は経産省を通じて日本国政府に、改正外為法を適用させてまで経営陣の意に反する海外投資家の権利行使を止めようとするなど、「じゃあなんで上場してんなよ」レベルの信じられない株主コミュニケーションを炸裂。

報告書はこの他にも菅官房長官(当時)の超強権発言や、元テスラ社外取というスーパーコンサルタントの唐突な登場など、斜め上のガバナンスを楽しめるコンテンツが盛りだくさん。「典型的な日本の大企業病」が一気に読める、徒労感あふれる名作だ。

ノミネート番号:7

銘柄コード:7196Casa
[PDF] 特別調査委員会の最終調査報告書受領及び公表に関するお知らせ
「服破り」で黒い付き合い高確示唆?

昨年12月の文春記事『「ぶち殺すぞ」「電車に飛び込め」東証一部上場「Casa」社長の“罵倒音声”』(現在は非公開)で明らかになった、当社子会社元社長(A氏)に対する当社社長のパワハラ疑惑発言(音声記録)において、当社社長が「来いよ、腕っぷし俺、自信があるから。来い来い。俺も輩は輩で何人も付き合っとるから。」と発言していたことから、この社長が付き合っているという「輩」とは反社ではないのか、また、社長にはパワハラ癖があるのではないのかと指摘されて設置された第三者委員会の調査報告書。

まず委員会は、この「輩」発言の裏には、「自分の代表取締役の名刺さえ1年間作成できない」というA氏が、部下からも見放されるほどの職務遂行能力の無さを露呈していた背景があったという。

そして、調査報告において自ら任務懈怠を認めるほどであったとされるA氏は、部下を含む周囲から厳しい指摘を受け続けた結果、退任を申し出るため当社代表ら経営陣のもとを訪れる。そこで当社社長から責任を追及されたA氏が激昂し、社長もそこから口喧嘩に応戦したところ、A氏が社長に暴行を働いたことにより、社長は件の「輩」発言に至ったという。

しかしながら何よりも読者の心を掴んだのは、その発言後に「当社代表取締役の着ていたTシャツが破け」、そこから代表による大岡裁きが展開された結果、A氏がお礼の言葉を社長に告げて終わるという謎コント。これが「北斗」世代には堪らないとの評を受け、堂々のノミネート理由となった。じゃあなんでA氏は録音データを文春に売ったんだよ。

最終的に調査報告書は、代表にはかねてから発言に気を付けてほしいと思っていたという社員は現れたものの、執行役員は「労働者」ではないから、代表の強い口調による指導はパワハラに該当しないけど言動には気をつけてねという穏便な結論に。

「長らく不動産関係の仕事をしてきた中で、そのような素行不良な人間とも対峙してきたという趣旨で言った」という意味で、反社と付き合いがあるわけではないとされる代表の「輩」発言。やっぱ不動産業って恐いんすかね。

ノミネート番号:8

銘柄コード:7519五洋インテックス
[PDF] 外部調査委員会の調査報告書の公表に関するお知らせ
あの東証ですら匙(さじ)投げ

本年の上場廃止記念枠。 レビュー未了のはずの監査法人の四半期レビュー報告書を開示するなど、信じられない同社の内部管理体制等について改善の必要性が高いとして、東証は同社株式を特設注意市場銘柄に指定していた。

その指摘に対する改善計画の提出に1年近くを要した上に、その改善計画ですら虚偽の内容を多く含み、さすがの東証も「内部管理体制等の改善がなされず、かつ、改善の見込みがなくなった」と匙を投げ、当社株式の上場廃止を決定した。

本件の第三者委員会による調査は、当社の連結子会社において、元従業員が当社に対して簿外の貸付を行なっているとする主張をしていたことによる、「今年のクソ企業こんなんばっかやんけ」案件によるもの。なお、その前の社内調査の時点ですでに当社の簿外預金口座が見つかっている。

委員会は会社には当該債務が存在しないと認定したものの、実印の押された契約書が現実に存在するなど、元従業員の主張がまんざらでもなく展開されてしまう当社の杜撰な通帳・印鑑管理・密接な取引先との取引の異常さが、どうしたら上場企業でリード文含めて報告書スキャンがこんなに擦り切れられるんだというPDFで展開されていく。

報告書では締めの文章で、新役員が動き出してわずか1ヶ月程度で、「過去の五洋インテックスの状況を省みれば、社内の状況が相当に改善しつつある」としていたが、東証からは「上場廃止等の決定」のお知らせにおいて、どうみても改善の余地が見られない当社の内部管理体制を真正面から指摘されて株式市場から退場宣告。万事休すとなった。

ノミネート番号:9

銘柄コード:8166タカキュー
[PDF] 第72回定時株主総会第1号議案(剰余金の処分の件)無効のお知らせ
会計監査人は何やってんの

衣料品販売を行う当社だが、新型コロナによるリモート勤務環境およびファッションのカジュアル化に伴う紳士服需要の減退により、不採算店の整理を伴う厳しい事業環境となっている。

そうした中、当社は第72期決算時において繰越利益剰余金が△1,983百万円となったことから、その他資本剰余金から同額を繰越利益剰余金に振り替えることで補填すべく議案を定時株主総会に上程。何事もなく当議案は可決された。

ここで会計的な話とはなるのだが、日本では原則として純資産の部において、資本剰余金と利益剰余金とを区別し、混同してはならないとされている。
だが、利益剰余金が負の残高のときに、それをその他資本剰余金で補填することは資本剰余金と利益剰余金の混同にはあたらないと考えられており、現実に多くの会社で欠損の補填が行われている。

そのため資本政策面でのケアとしての今回の議案となるのだが、残念ながら当社のB/S には他にも利益準備金500百万円が存在。このため、会計基準上は資本剰余金から補填可能な金額は、利益剰余金トータルの額である1,483百万円が限度であった。

当該議案は、当然に当社が会計監査人との事前協議を経て会社提案としたものであったが、これが会社法の定めに反する事実を株主含めて全スルー。 ノミネート推薦者も「ただただお粗末」と呆れるしかなかった。

ノミネート番号:10

銘柄コード:8303新生銀行
[PDF] (開示事項の変更)当行株式に対する公開買付けに関する意見表明の変更(中立) および臨時株主総会開催中止に関するお知らせ
フタを開ければ負け戦

複数の地域金融機関への出資を通じて「第4のメガバンク」構想を掲げるSBIHD の子会社「SBI地銀ホールディングス」が、9月9日、当社に対して敵対的とみられるTOBを打ち出した。

歴史的低金利に苦しみ、約3500億円の公的資金の返済が進んでいない当社。 当時時点で当社の20%株主であったSBIHD グループは、当社に対して従前、「主要株主としての立場から、対象者(新生銀行)の業績を改善し、企業価値を回復・向上すべく、適切な施策を早期に実施することが急務」とし、当社をSBIHDグループの中核的な連結子会社または持分法適用関連会社として位置付けるため、当社株式をトータル最大48%まで買い付ける提案を行ってきたという。

しかし、この提案およびSBIHDとの証券業務分野での提携の話に、当社経営陣がまったく乗って来なかったところ、3月には当社がSBIHD にはダマで、マネックス証券と金融商品仲介業務における包括的業務提携を行うことで合意。
SBIHD 側は当社の役員構成もこれまでGS・マネックス寄りで納得がいっていなかった中、SBIHD はここで相手にされていなかったことを明確に認識。
そこから半年間、必要な認可取得の手続きを進め、晴れて「よろしい、ならば戦争だ」状態へと突入した。

SBIHD に対して、当社経営陣がマネックスと一緒に引いたはずのトリガー。しかし、そのわずか半年後に、金融業界では異例の(実質)敵対的TOBの対象者となった当社に出来ることは、改めて思い起こすと「時間を稼ぐこと」しかなかったのかもしれない。
後手に回った当社がSBIHD 傘下となってしまう流れは、大株主である国も賛同できないほど身勝手な買収防衛策では止められず、現経営陣は退陣することとなった。(ただし、ISS など、当買収防衛策に賛成する大手機関も無いことはなかった。)

外堀を着実に埋めてきたSBIHD。味方してくれた国にきちんとお返しが出来るか、今度は自身が主張した買収「シナジー」の具現化が問われていく。

ノミネート番号:11

銘柄コード:8473SBIホールディングス
[PDF] 調査報告書 (公表版):SBI ソーシャルレンディング株式会社
ハイリスク融資×ソーシャル=知ってた

インターネットの力を借りて、無数の小口債権者をもとに大きな融資を成立させ、これまでにないレンディングモデルを成し遂げることが期待されたソーシャルレンディングモデル。
株式上場のためにその事業を行う会社には、その運用は厳しかったのかもしれない。

SBIHD 子会社の「SBI ソーシャルレンディング(以下、SBISL)」が行なっていた事業では、融資を必要とするプロジェクトごとにファンドを組成し、最低額1万円という小口の債権者を募集。当然、そのような小口債権者には普通のサラリーマンなども含まれる。

そして、このスタイルのソーシャルレンディング事業では、運営主体がファンドを組成し、前述のような資金の出し手を募ることさえ出来れば、たとえ債権が焦げ付いたとしても損失を被るのは、運営側ではなく資金の出し手側である。

SBISL は、特捜が動くほど残念な太陽光系企業ともソーシャルレンディングを結びつけ、この手法で150億円を超える小口資金を集めていたものの、これが真っ黒焦げに。こうした黒焦げ事案の裏側には何があったのか、さすがに当局も当社に対して報告を求めざるを得なくなった。

これをきっかけに行われた第三者委員会調査により明るみになったのは、想像に難くない与信管理の甘さ。だって、貸し手はSBISL じゃなくて、それをSLが仲介してるだけなんだもの。

次々とファンド組成と運用を鬼速PDCF で回し、圧倒的成長を実現して上場しなければならなかったSBISL において、与信管理など圧倒的後回しとなる。与信管理で収益は生まれないもんね。

結果的に第三者委員会の調査で明らかになったのは、ファンドの組成から貸付審査までのほとんどを1人が形式的に仕上げる爆速レンディング。だって、貸し手はSBISL じゃなくて(以下略)。

こうした調査に基づいて、本件で焦げ付いた小口債権者に対して巨額の損失補填を打ち出してまで撤退を明確にした当社。このグループの子会社となる新生銀行は、それなりに震えて仮眠すべきなのかも。

ノミネート番号:12

銘柄コード:8418山口FG
[PDF] 社内調査本部による調査報告書と今後の対応方針に関するお知らせ
暴走CEO(61) ブレーキ間違え大事故に

日本経済新聞も国内「金融史に残るトップ解任劇」と報じた山口FG会長兼グループCEOの解任。

愛を唄う某金融業者とコンサルと共に、CEOはFG内に「全国区の個人金融専門」の新銀行をつくるという共同プロジェクトを画策する。
そこで取り扱う予定とされた商品の1つには、リテール顧客に毎月10万円を貸し付け、顧客は利息のみ(想定金利15%)を返済し、借入上限に至るまで債務が積み上がると、そこから元金・利息を返済させるというものがあり、その借入上限額は本人が加入する(あるいは、加入済みの)死亡保障の保険金額とする、本当にそこに愛はあるんかという驚愕の企画も進められていたという。

しかしながら、これらのプロジェクトはほとんど取締役会に諮られることなく、CEOは無断でコンサル側のパートナーを、山口FGのいずれの役員よりも高い1億円以上の報酬で新銀行CEOとして迎え、その他の外部の5名に対しても勝手に採用内定を通知する。

こうした独断プロジェクトの他にも、このプロジェクトを山口FG側で受けさせられた当FGリテール部門の主要な責任者に対して、CEOは直接権限をもって短期間での降格処分を繰り返し指揮。

独断プロジェクトに加え、こうした人事的な圧力で山口FGリテール部門の役職員が心理的な危機感を覚え、自由な議論や意見交換を行うことが困難となっていた事実などについて、CEOの独断専行を取締役会は「権限逸脱」と認定。
CEOに過度に権限が集中しているガバナンス体制も問題視した。

今回の調査報告にはさらに、5月に行われた社内調査の調査報告書も添付され、そこではCEOの女性スキャンダル、独断での高額コンサル契約締結についての告発に加え、「専横政治に嫌気がさし、山ロフィナンシャルグループの将来に不安を持った多くの行員がグループを去り、残った行員も最悪の状態にある。2020/9月期の山ロフィナンシャルグループの経常利益から、国債等関係益投信解約益株式等関係益による益出し、その他の同様なものを除くとほぼゼロに近い。2020/12月期においても低位に留まっている。一方、IR資料では、「益出し」とは見えないような表現をしており、銀行関係者の間では、これは粉飾決算ではないかとの声もあがっている。なお、その「益出し」余力も年々低下してきている」と、CEOの経営成績を追及する社内の声も紹介されている。

12月24日の臨時株主総会で前CEOの取締役解任決議が諮られるが、すでに山口FG側は再雇用制度を整備し始めており、経営管理部も報道に「経営体制が変わり、社員を大切にするようになったので復帰も検討してほしい」と露骨なコメントを寄せている。おもろい。