「適時開示アワード2024」のノミネート適時開示情報は以下の作品となります。
現在では取引先の信用力を評価する企業格付情報や、反社チェックツールなどを提供する与信管理支援ASP・クラウドサービス事業を展開する当社。
そんな当社にとって東京商工リサーチ(TSR)は設立以来の大株主で、当社もTSRが提供する企業データベースなどを利用してサービスを展開して成長を続けてきた。
そんな両者の関係に大きな亀裂が入ったのが2021年11月19日。
当社からは「業務提携の解消に関するお知らせ」という下記の開示がなされた。
当社は、2022年3月31日をもって、株式会社東京商工リサーチとの業務提携契約を解消することとなりましたので、下記のとおりお知らせいたします。
提携解消の申し出を行ったのはTSR側だったといい、当社としては独自の信用評価指標である「RM格付」の精度も向上してきていたこと等から、「本業務提携解消による当社に与える影響が軽微であるとの判断に至った」とし、この申し出を受け入れたという。
自前のサービスで乗り切っていけるという表現ではあったものの、結果的に、経常利益は提携解消直後から減少していくこととなる。
そこからは、一部の経済誌がゴシップ的にこの解消後の両者の関係について報道するなどしていたが、当社からはTSRとの関係について音沙汰はほとんど無く、2年半が経過した今年9月のタイミングで当社が突如開示した「当社に対する訴訟の提起に関するお知らせ」で、ようやく投資家は提携解消の「その後」について知ることとなる。
この開示によると、当社はTSRから、企業情報の利用中止及び返却又は消去等を求める訴訟を「2022年6月3日(訴状到達日: 2022年7月27日)」に提起されていた旨が記載されており、結果的にその事実を2年半にわたり開示してこなかった事実が明らかとなる。
本件開示が大幅に遅れてしまった理由として当社は、「業務提携解消後においては、当該企業情報を削除しており、同情報の保有や利用は一切行っておらず、また、当社会員の手元にある情報の消去義務等はないものと考えており」、「訴訟提起時点では、訴状記載の訴訟物の価額が160万円と少額であり、また損害賠償請求の内容が1日ごとの請求であり少額であったこと、関連する係争案件である立入検査仮処分、間接強制の却下、有利な条件での和解などもあり、早期解決が見込まれたことから、開示は不要と判断」していたためという。
しかし、いくら訴訟物の価額が「1日」160万円であったとしても、それが積もりに積もって東京地裁が本件開示の前日に下していた判断とは、TSRに対して12億円超を支払えという損害賠償命令だった。
当社は命令を「契約の合理的解釈としても通常の商慣習においても妥当とは到底言えない」とし、控訴する方向で検討するとしたものの、直近純資産の2割程度にも及ぶ巨額判決が実際に出てしまってからの本件開示となり、それまでの有価証券報告書でも「当該訴訟自体は当社事業に影響を及ぼすものでは無い」とした以外にそれらしい記載も一切ないという、おおよそ与信管理会社とは思えない情報開示体制には投資家らも「信用情報評価会社としてあり得ない」と批判した。
その後は東京地裁判決とほぼ同額の訴訟損失引当金を繰り入れて業績予想(親会社株主に帰属する当期純利益)を従来の1.8億円から△11.6億円に下方修正し、社長も業績連動報酬の不支給ならびに役員報酬の3割自主返上を決定。株価もそれに呼応するように下落している。
「モンスター」とは自己の内部にこそ潜む存在であることを改めて認識させてくれる事例となった。
前代未聞のダウンサイズ「再非上場」
かつて2004年1月に東証に上場を果たした当社は、べインキャピタルグループの「BCJ-12」が2014年に行った500億円規模での株式公開買付(TOB)提案に対して当時の筆頭株主であったヤフーと共にこれを受け入れ、上場廃止となった過去がある。
創業者は2014年上場廃止当時、東洋経済からの「公開したままでも、事業構造の変革は行えるのでは?」とのインタビューに対し、当時の「成熟した国内」で業界再編や新規事業の育成を進めるにあたり、「当社のPER (当時)は比較的高く、25倍前後ぐらいのPER がある。それを維持しようと思えば、純利益の額がとても大切になるが、たった5億円の投資でも、その投資が失敗すれば時価総額にして100億円以上の価値が飛んでしまうかもしれない。そう考えると、どうしても大胆な投資を躊躇してしまう」とし、「非上場化によりスピーディーに経営していくことが必要と判断」したと語っていた。
しかしそれからわずか3年後の2017年3月に、当社はふたたび東証に戻ってくることとなる。
掟破りの再上場であるだけに、その後は順調に推移すると期待された当社の株価も、2019年6月期にかけて米中貿易摩擦に端を発する世界的なデジタル・マーケティング株の下落や為替の変動を反映するように上場来最安値を更新。
2020年6月期には対面実施の定性調査を休止するなど新型コロナの影響を受けて最終赤字となった。
それからも2019年中盤以降の5年間は、再上場時の株価水準を大きく下回る状況が常態化。
そんな折に今回開示されたのがなんと、今度はCVCキャピタル系による「再非上場化」だった。
今回CVCキャピタル系が提出した公開買付書に記載された、前回の非上場化の際における当社側の総括は、2014年当時の国内マーケティング・リサーチ市場の飽和に伴い、大型の M&A や積極的な投資等を行う必要が高まってきていたところ、「そうした M&A や投資等に伴う一時的な損失を少数株主に転嫁することを避けるべく、2014年4月に東京証券取引市場第一部の上場を廃止することにしました」と最初の非上場化の経緯に触れている。
そうした総括を行った上でもなお、今回当社が説明する「再非上場化」を検討するきっかけとは、「積極的な投資の継続や経営・事業基盤の強化等の取組みは、中長期的には当社グループの企業価値向上に資するものであったとしても、短期的には一時的な利益水準の低下やキャッシュ・フローの悪化をもたらすリスクがあります。一方、資本市場においては、中長期的な視点に立った積極的な成長施策よりも短期的な収益性確保が選好される傾向が近年更に強まっていると考えています。このような環境下において、当社が上場を維持したまま、上記施策を講じる場合には、当社グループの本源的な成長を達成するための戦略と資本市場からの期待に乖離が生じて、必ずしも十分な評価を得ることができず、当社の株価に悪影響を及ぼし、既存株主の皆様に不利益を与える可能性も否定できません。」だったという。前の非公開化理由を長くしただけやん。
再上場時の公開価格ベースを大きく下回る価格、しかも初回非上場化ベースをも下回る水準での「再非上場化」公開買付という、日本では耳慣れない事態に、投資家からは大きな溜息も漏れた。
16ページを超える「異常」な暴言集
現在の社名よりも旧「東理HD」と言った方が界隈に伝わる当社は、元社長が、経営状況を無視して自身の報酬を増額することを要求し、当社の取締役会の承認がないままに当社から個人名義の銀行口座等に多額の金銭を送金させ、取締役会の承認を得ずに多額の経費を支出し、さらに、他の取締役に対して度重なる罵倒、暴言などパワーハラスメントととられる言動を行うなど、当社の円滑な業務執行の妨げとなっていることなどを理由として、2024年9月に取締役会の任意の諮問機関として「ガバナンス委員会」を立ち上げた。
本委員会は当社と利害関係のない独立した外部専門家とする委員で構成され、取締役会の諮問に応じて元社長による上記の「問題行為」に関する事実調査ならびにその結果としての取締役会としてのコーポレート・アクションに関する提言などを行う目的で立ち上げられたが、その元社長に関してはすでに2024年8月23日付けで、当該「問題行為」により取締役会がその職を解職する決議を行っていた。
調査の結果、ガバナンス委員会は元社長による取締役会の承認を経ない自己の報酬増額および流出行為について、善管注意義務及び忠実義務違反により1億2,000万円の返還義務を認め、取締役会の承認を経ない12億円の資金移動(うち2億円は着服)行為についても特別背任罪が成立し得ると指摘。
また、その他の取締役会の承認を経ない経費支出についても、同様に損害賠償責任が認められる可能性があるとした。
今回、この適時開示が何よりもウォッチャーの心を踊らせたのは、別紙に登場する元社長の「経営者としての人格の異常性」を表現する、パワーハラスメントを越えるほどの悪質な人格攻撃や脅迫行為を含んだ「暴言」の数々である。
特に、元社長からの資金流出要求の数々と対峙してきた当社の経理部長に対する”口撃”は凄まじいもので、パワハラ社長による「犯罪行為」というべきレベルの役職員に対する暴言集は、社長解職前後たった2ヶ月の「語録」にもかかわらず報告書2分冊目(2/2)の終盤「別紙」で16ページ以上にわたって展開された。
その暴言は「株が買えなくした事の株式での損害をメインに損害賠償請求をさせて貰う 40 兆円の株を買うチャンスを失った損害賠償は何兆単位の損害賠償請求になると思う」「XXX法律事務所にXXXXを使って 40 兆円の資金を使って何十兆円の利益を得られる機会を失ったから逮捕してくれと頼むから覚悟しとくように」といった、資金流出を阻止されたことへの謎すぎる皮算用を中心に、「俺は今や検察庁長官に指示するポジションになった」「お前の家に丸の内刑事を連れていき引っ張って送金させる」「刑事ではなく、検察を呼ぶ」「俺には神様さまがついていっらしゃる」「俺は全てのテレビ局を買収しているから真実を伝えるのに何でもできる」「お前の取るに足らない頭脳で世界一天才の神に使える俺に勝てるわけがない」(すべて原文ママ)などといった妄想に終止し、ガバナンス委員会いわく「阿呆、犯罪者、バカ、能無し、地獄で悶え苦しむ、死ね、仕事できない、能のない、能力がない、人間のクズ等の精神的な攻撃と言える発言」を繰り返す、ただ読んでるだけでも頭痛がする程の異常な不規則発言のオンパレード。
報告書1分冊目(1/2)でも、経理部長らが管理する通帳を使わずに資金を流出させるために画策する元社長との虚しい戦いを余儀なくされ、元社長の度重なるパワハラとコーポレート・ガバナンスとの狭間で奮闘する経理部長の姿には涙を禁じ得なかった。
ガバナンスの無い世界で経理部長の職を適切に執り行うことというのは、かくもハードなことなのだという事実を認識させられる一方、2024年11月14日提出の半期報告書では依然として元社長と同姓の大株主とで合計4割の当社株式を有している状況は何ら変わっていない。
前CEOらによる「連結隠し」 舞台はSlack上
当社は2020年12月にマザーズ上場した会社で、電力自由化の機運に乗じて電力切替プラットフォームの提供を開始し、エネルギープラットフォーム事業とエネルギーデータ事業を展開していた。
当社CEO の輝かしい鳴り物入りで上場を果たしたものの、それ以降は一度も黒字を計上したことがないまま、2022年12月決算では自ら「トンネル」と呼ぶほどの連結純資産の1/4を超える大赤字を計上。当社の社外・執行役員を含む役員の報酬体系にも株価連動性が高く設定され、翌期で業績を大幅に改善しなければならないインセンティブが経営陣に強くはたらいていた。
そうした中で当社は2023年度について「満充電で再スタート」と題し、新規事業と銘打たれた「EV充電事業」を展開することを株主に誓う1年と設定。
早期黒字化への道筋をつけられるよう、このEV充電事業の一刻も早い業績寄与が、経営陣にとっての至上命題となっていた。
調査委員会の認定によれば、この過程でCEO はこのEV 充電事業によって、当社の子会社であるEV ラボが販売するEV 充電機器等の代金および工事代金や、当社が受け取る運営受託料などの収入を売上計上できるような取引先を必要としていた。
だが新規事業ゆえ、そのような外部候補先はすぐには開拓できず、結局は身内に近い取引先に本件事業スキームへの取引参画を求めていった。
その際にCEO らも あずさ監査法人と打ち合わせを繰り返していくものの、それらの取引先候補があまりに身内すぎて、EV 充電事業における販売行為等が実質的な内部取引にあたる可能性が高く、売上や未実現利益の計上が困難であることを知っていく。この事情により、彼らは当社からすれば身内すぎる取引先を、連結に含めずに済むようなスキームづくりを目指していくこととなった。
そこでCEO は、創業以前より世話になっていたX 氏の他、M 社とN 社の3 者からSPC (特別目的会社)へ出資をしてもらうカタチで、当SPC を本件売上先として確保。その過程でCEO や当社CFO および執行役員などは、このSPC の実質的意思決定に当社が関わっていることを示す可能性のある情報を、当社取締役会や会計監査人には一切伝えなかった。(一方、調査委員会はこれを「隠蔽していた」とまでは認定しなかった。)
その結果、当社グループがこのSPC らから収受するEV 充電機器等の売買代金、工事代金及び運営受託料を、当社グループの連結財務諸表において、一旦は売上計上が認められることとなる。
しかしその後、このSPC の最大出資者による出資が完了したことを踏まえ、あずさは2023 年度通期の監査手続において当SPC における意思決定の状況を確認する最中、2024年2月に本件会計処理に関する外部通報を受け、X 氏による当該SPC への出資時に、その出資額の半額をCEO がX 氏に貸し付けていた事実などを掴んでいくこととなる。
これを受けてあずさ側は常勤監査役に対し、X 氏との間で、X 氏に影響力を及ぼし得るようなサイドレターが存在しないか等を確認する目的でのデジタル・フォレンジックの申入れを行うなどし、最終的には本SPC を当社の連結範囲に含めるべきであるとの結論に至り、当社取締役会において必要な情報が十分に共有されていないなどの内部統制上の問題があるのではと指摘。このSPC が連結対象に含まれた結果、当社は一時的に債務超過に陥ることとなった。
そうして設置された本件調査委員会も当該デジタル・フォレンジック前後においてCEO らが不都合なSlack 投稿を一度は削除するなどの不適切行為等を確認。
最終的に当社において、CEO を牽制できる役割をもった執行側の人材や部署が十分に機能しているとは言いがたく、社内の法務コンプライアンス態勢が脆弱であり、会計監査人とのコミュニケーションが不十分であったことなど内部統制の問題を指摘した。
その後、CEO はこれらの責任を取って退任することとなり、現在、当社では経営体制の立て直しを図っている最中だが、この元CEO が保有する株式に他の上場会社から突如、質権設定が行われるなど、経営をめぐる混乱は長期化しそうだ。
大美術館が抱える低「資本効率」
今年、アクティビストとしても有名なオアシス・マネジメントが当社株式を相次いで買い増し。
当社PBRは1倍を下回っており、オアシス側は「株主価値を守るため、重要提案行為を行うことがある」としていた。
投資家らの当社に対する資産効率改善への要求もついに極限まで高まってきた中、当社は2024年2月13日に「長期経営計画『DIC Vision 2030』の見直しに関するお知らせ」を公表し、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応の一環として、「価値共創委員会」を設立。
その委員会の初回では、企業内美術館として千葉県佐倉市に運営しているDIC川村記念美術館の現状について討議がなされた。
その討議の前提として、この美術館に当社は754 点の美術作品( 2024 年6月末時点の簿価ベースで総額 112 億円)を所蔵しており、これらの展示が地域への社会貢献活動の一環として来館者より高い評価を得てきたとしつつも、「価値共創委員会」としては同美術館を保有資産という観点から見た場合、特に資本効率という側面においては必ずしも有効活用されていない現状を認識しており、「社会的価値と経済的価値の両面から、美術館運営の位置付けを再検討すべき時期」にあるとした。
討議の結果、価値共創委員会は「現在の当社業績、美術館と当社経営・事業との関係、投資家からの意見等を踏まえると、現状のまま美術館を維持、運営することは難しいと考えられ、また運営コストを考慮すると、東京への移転を想定した「ダウンサイズ&リロケーション」もしくは「美術館運営の中止」を前提とした2つの案」を助言として取締役会に提示。
取締役会もこの提示を受けて、当社が保有する美術館および美術品は、当社にとって主力製品である顔料およびインキのこれまでの出版・芸術文化への貢献から、「発展の歴史を象徴するコーポレートアイデンティティの一部」であると認識しつつも、美術館運営の効率化のため、「ダウンサイズ&リロケーション」を具体的なオプションとして検討し、 2025 年 1 月下旬から休館する予定と表明した。
その後、外部の「千葉市近隣美術館連絡会」は佐倉市⽴美術館、千葉県⽴美術館、千葉市美術館、成⽥⼭書道美術館と連名で声明を発表。
「DIC株式会社がさまざまな経営課題を抱えておられ、美術館の公益性や企業の社会貢献の側⾯のみにとらわれていたら、事業を継続させることが難しい事態だということを⼗分に理解」するとしつつも、「「ダウンサイズ」が不可避であったとしても、この地で歴史をつないでいかれることに、⼤きな希望と期待をもっています」とした。千葉県博物館協会も「DIC 川村記念美術館は、千葉県の博物館業界を牽引してくれる大切な存在」であり、今後も千葉県内に留まることを要望した。
これらのニュースは美術愛好家にも衝撃をもって受け止められ、日本経済新聞によれば「8月下旬の休館予定の発表後、土日祝日の来館者数は、発表前と比べて5倍に増えた」といい、これを受けて2024年9月30日には当社からも「DIC川村記念美術館の休館開始予定の延期に関するお知らせ」として、「適時開示を行った後の美術館への来館状況等を踏まえ、休館前に、より多くのお客様に美術館にお越しいただくことを理由に」、休館開始日を2ヶ月遅らせるとのリリースが発表された。
長い美術史の中では、美術品の運命が資本家の動向にさらされることが数多あるが、海外投資家らの資本効率要求が日本の創業家の美術館運営に大きな影響を及ぼす本件は、コーポレート・ガバナンス時代の1つの象徴にも映る。
巨額債権の焦げ付き ダマで借りてみました
インターネット広告を手掛ける当社は2024年5月8日、「債権の取立不能または取立遅延のおそれによる貸倒引当金繰入額の計上に関するお知らせ」という適時開示をリリースした。
これは当社が、2023年4月から「脱毛サロンチェーン運営会社」に対してアフィリエイト広告の代理販売を行っていたものの、その売掛金の取立遅延が2023年12月より生じており、当該取引先に対する債権の金額2,215百万円に対して「一過性の損失ではあるものの」全額の貸倒引当金繰入を実施したという開示内容だった。
これにより当社は同日さらに、当期470百万円としていた経常利益予想が△2,215百万円と予想数値を大幅に引き下げる業績下方修正を発表した。
一方、当社は同日に「資金の借入に関するお知らせ」という別の開示も行っていた。
それによると当社は手元流動性の確保のため、りそな銀行から無担保・無保証で10億円を長期借入するというもので、前述の開示「債権の取立不能または取立遅延のおそれによる貸倒引当金繰入額の計上に関するお知らせ」では、こうした手当てもあり、「現時点において事業運営に当面にわたって必要となる安定的な運転資金を確保しております。したがって将来のキャッシュ・フローの見通しに対する懸念はございません」と記していた。
だが、その1週間後に当社が行った本件適時開示において、「当該借入の契約時点において、当第2四半期連結会計期間における多額の営業損失に関連し、報告義務に違反した可能性がある」旨を開示。おいおい、自分の貸倒懸念債権ダマで借りてたのかよ。
また同日、継続企業の前提に関する事項の注記が付くことも開示した。
そうした結果、そのさらに2週間後には「借入金の期限前弁済に関するお知らせ」、つまり、借入期間4年の借入をたった3週間で弁済したことを発表。
そのリリースに記載された「本件借入に関する事実経緯等も踏まえて、本件借入元本は当初より当社グループの資金繰りに織り込んでいなかったため、本件弁済による当社グループの資金繰りへの影響はありません」などという、そんなわけないであろう名フレーズには、投資家らも泣いた。
それから4ヶ月たった2024年10月、関西でこの年最大の大型倒産が明るみに出る。
当社は、5月8日に開示していた「取引先」の当時の親会社がこの船井電機であったことを2024年10月4日に開示した。
その後、「貸倒引当金繰入額の計上に係る社内調査及び再発防止策に関するお知らせ」という適時開示では、「A社(脱毛サロンチェーン運営会社)の信用を補完するべく、同社の親会社である船井電機・ホールディングス株式会社の連帯保証等の措置」をとっていたため、A社に対して「同社(船井電機HD)の信用力を前提とした与信金額の設定」を行っており、これが「実質的に社内与信ガイドラインに違反した判断」であったことを事後的に開示した。
こうした今年の混乱を受けてもなお、当社の2024年9月期通期の売上は過去最高の7,462百万円(前年同期比+29.6%)で着地しており、貸倒れは一過性の費用であるとして次期以降のPLには影響がないと当社は認識するものの、株主資本は前年度の21億円から2億円弱に低下。
短期借入金が8.5億円増えた結果、流動比率も177%から1倍割れの75%へと大幅に低下しており、同社の成長性への期待と同時に、資金繰りに関しても視線が集まる。
ちなみに本件について詳しく報じる東京商工リサーチ記事のタイトルは、「船井電機HDが債務保証、旧ミュゼの広告費の行方」である。
社内全域に「売ったテイ」が蔓延
本件開示は、2023年8月31日に金融庁から当社の会計監査人であるA&Aパートナーズに対して、金融庁の公益通報窓口に「当社が売上の先行計上の不正を行っている」という通報があったことが伝えられたことから、A&Aからの強い要請もあって設置された第三者調査委員会による本件不正に関する調査報告書。
本件調査からは中古車販売事業を行ってきた当社が、売上目標の達成を優先するあまり、納車前の車両を納車済みとして売上を先行計上する手段として、社内で「納車テイ」や「嘘納車」と呼ばれていた不正な会計処理が行われていた実態を明らかにしている。
当社では顧客への納車完了時に、顧客から納車が完了したこと等を内容とする車両納品確認書を受領した後、店長による納車確定承認の手続が自動車販売・整備業務支援システム上で行われた場合に、経理部において当該顧客の入金情報が登録されていることを確認して自動車の売上を計上している。
なお、販売管理システム上では、納車に際しての名義変更手続に係る自動車検査証(車検証)のデータがアップされる運用となっているが、どうやら経理部での売上計上フローでは、名義変更手続の有無について確認するフローとはなっていなかった。
当社は株式上場に際して収益認識基準が納車完了時に変更された2015年9月期以降、取締役A2氏の指示に基づいて実際には納車が未了(顧客が資産に対する支配を獲得していない)状態、つまり「納車テイ」による車両売上の先行計上が行われていた。
例えば、2019年12月末(2020年9月期の第1四半期末)においては、当時常務取締役であったA2氏は、当時の営業本部長に対し、販売店全体で納車テイ処理することができる車両、すなわち、入金(または入金+車両名義変更)が当月内に完了している「納車未了」の車両を取りまとめるよう指示。
それを受けた営業本部長は各営業部長宛てに、こうした納車テイが可能な未納車車両のリストアップを要請していたが、この際に一部の営業部長が管轄内の各店長に対して、「年内入金のものに関しては、全部T納車(納車テイのこと)します」とメールしていたことが明らかに。
調査委員会では各営業部長のレイヤーでも、上層部からの指示に基づいて全社的に納車テイを実施することを認識していたものと認められている。
この営業本部長による「納車テイ」可能な車両情報の吸い上げにより、A2氏に対し、全販売店において「嘘納車になる車両」の台数が191台であったことが報告されている。
しかも、こうした売上の先行計上は営業部の独断で行われていたのではなく、経理部も「納車テイ」開始時から認識しており、さらに営業本部長の異動後には「納車テイ」報告の取りまとめ役が最終的に経理課次長にまで引き継がれるなど、全社的な認識事項となっていた。
こうした売上の先行計上はあくまで「先食い」であり、これを一度始めてしまうと翌年の予算達成が困難となるため先食いが常習となっていきやすいものだが、それ以上に困難となるのは、実在庫の辻褄合わせである。
納車テイが行われると、売上計上は行われるものの、売ったと処理した(顧客への引渡しが完了した)はずの車両が販売店に残ったままとなってしまう。
当社の車両在庫の棚卸作業では、決算期末に販売店にある在庫車両に貼付されたQRコードを読み取ることで、在庫データとの突合が行われているそうだが、販売店のうち1~2店舗についてはA&Aによる立会監査も行われていたという。
この点、実際も2019年9月期の決算時の棚卸作業において、納車テイの処理がされた車両について実際にQRコードを読み込んでしまっていたものが数件あり、A&Aからも納車未了のままの売上について指摘がなされたことがあったのだというが、調査委員会によればその後は、この指摘も立ち消えになっていたもようだ。
その後も2021年 9月期末のA&Aの予告立会監査でも、納車テイの発覚を免れるために在庫車両を近くの駐車場に一時的に移す店舗がみられた。
これら売上先行計上のリスクは常勤の監査等委員B1氏からも監査調書やリスク・コンプライアンス委員会で指摘されていたものの、代表取締役はこの指摘が金額的に影響の大きい話と考えていなかったと調査に回答。
役員らもかかる指摘に対して適切な対応をとった形跡は確認されなかったどころか、2023年9月期末の決算に際してはA2氏が「相当数字が厳しいので(納車テイを)いけるだけいっていいですか」と代表取締役に確認したところ、「全然いいよ」と言われたとのことであった。全然ダメです。
調査の結果、不正件数は6,000件に及ぶとされ、約6年間の当社個別財表上の売上高への影響額は通算△26.6億円、売上総利益への影響額は通算約4.5億円にも上った。
また、当社も例に漏れず、昨年から中古車販売業界を賑わせ続けていた不適切な保険金請求問題の当事者であることも明るみに出ており、与信面での信用も地に落ちた。
その後、社長は当社グループすべての取締役から退任し、当社株式もTOB を受けて非公開化。宇佐美鉱油傘下で出直すこととなった。
客先に「強盗」「放火」 後手後手の事後対応に批判
(当リリースは適時開示されていません。)
当社は2024年11月6日、「当社元社員が強盗殺人未遂、現住建造物等放火の容疑で広島県警察に逮捕」されたとするニュース・リリースを発表した。
リリース上では具体的な言及はないものの、各社報道をまとめると、この元社員は2024年7月28日に、自らの顧客であった80代の夫婦に睡眠薬を飲ませて住宅に放火(殺人の意図はないと主張)。放火事件の以前も含めるとこの夫婦から合計約2600万円の現金などを奪っていたとみられており、折しも「広域強盗」に日本列島が恐々とする時代に、証券会社の社員が自らの顧客を襲撃するという悲惨な事件に日本中が衝撃を受けた。
当該元社員はすでに当社から懲戒解雇されている。
前述のリリースによると当社は、「2024年11月5日よりウェルス・マネジメント部門の営業企画担当執行役員を広島支店に派遣し、現地での対応を強化」したのだという。
これから「より厳格かつ実効性のある管理運用体制の構築を進め」る一環で、「当面の間の措置として、ウェルス・マネジメント部門の社員によるお客様のご自宅への訪問については事前承認のルールを導入」したとしていたが、その実効性に疑問の声も聞かれた。
それだけではなく、当社の後手後手の対応にも批判が寄せられた。
元社員が逮捕されたのは2024年10月30日。当社の名を冠する逮捕報道が行われたのも同日であり、2024年11月1日に行われた決算発表の会見では本件事件に関する質問が記者からなされており、当社CEOもその時点で状況を把握していることが明確であった。
さらに、Bloombergおよび朝日新聞の報道によると、この元社員は逮捕の約3ヶ月前である2024年8月2日の時点で「顧客の資金を盗んだ」と社内報告していたことを当社広報担当も把握しており、実際に元社員の懲戒解雇も2024年8月3日に行われていたことが記されている。(放火などについての申し出はなかったという。)
しかしながら、本件に関する当社からの情報開示がなされたのはその懲戒解雇の3ヶ月以上も後。実際に当社が「より厳格かつ実効性のある管理運用体制の構築」に向けてようやく動き出したのも同じタイミングであった。
こうした当社の消極的な情報開示体制に対する不信感も醸成されており、当社の中間決算は好調であったものの、今後の業績への悪影響が取り沙汰される。
その経営環境を踏まえ、当社が2024年11月14日に公表した「半期報告書」では「事業等のリスク」において、「役職員または第三者による不正行為や詐欺その他の犯罪により、野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります」との記述が登場。「野村の役職員が、上限額を超えた取引、限度を超えたリスクの負担、権限外の取引や損失の生じた取引の隠蔽、顧客に対する犯罪行為や違法行為等の不正行為を行うことにより、野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります」と記載した。
当社ではこの他にも社員の不審な行動が確認された場合には、顧客から当社お客様相談窓口(0120-763-123)またはWEB相談窓口で相談するよう依頼している。
職員に不正取引容疑 当局自身は適時開示できるのか?
「東証社員インサイダー疑惑」
2024年10月23日にタイムラインを駆け巡ったのは、市場を司る「東京証券取引所」の職員の親族による「インサイダー取引」容疑の報道。
この報道の数日前には金融庁に出向していた裁判官によるインサイダー容疑も報じられるなど、今年は「市場の番人」に対して証券取引等監視委員会がメスを入れる事例が相次いだ。
各社の報道によると、捜査対象者は東京証券取引所の「上場部開示業務室」に所属する20代の社員。しかも不正取引に利用されたのはTOB 等の情報を含む「他社の未公開情報」。
入社数年と勤務歴は浅いものの、自身で取引は行わず、親族に重要事実を伝達し、株取引を推奨した可能性があるという。現在のところ、報道ベースでは社員の親族が複数の会社の未公開重要情報を利用して600~700万円以上の利益を得ていた可能性があるという。
もちろん、当社内では社員に対して、入社時のみならず、以後も事あるごとにインサイダー取引に関する研修を行ってきている。
その上、「上場部開示業務室」に所属する際には当然に、より入念な研修プログラムが用意されているはずだ。
それにもかかわらず今回露呈した社員のインサイダー取引疑惑を発見したのは当社自身ではなく、外部の証券取引等監視委員会という体たらく。
ある識者は、開示業務室が扱う他社の情報があまりに利用価値が高すぎて、たとえ社員自身の情報端末の持ち込みなどを禁止したところで、価値の高い未公開情報ほど記憶に残ってしまう点を指摘している。知っちゃうと喋りたくなるのが人間なのよね。
こうした事案に対して、当社の内部管理体制は脆弱なのではないか、また、こうした重要な会社情報の発生に対して、他社に「直ちに有価証券上場規程にのっとった適切な開示を行う」べしと指導する側である当社自身の情報開示は適切なのかといった点が明確に問われている。
その後者について、当社がとった適時開示は現時点で2つであり、1つは報道が出た当日に開示された本件「本日の一部報道について」。
このリリースでは、報道内容について「東京証券取引所の社員が証券取引等監視委員会の調査を受けていることは事実であり、当社グループといたしましては、引き続き、調査に全面的に協力してまいります」と述べるに留まっている。
そして、もう1つの「独立社外取締役による調査検証委員会の設置について」はその6日後の適時開示であり、こちらについては報道直後のリリースでは一切触れていなかったものの、2024年9月27日の時点ですでに本件事案に関連して、「独立社外取締役による調査検証委員会」を設置し、社員への教育研修体制、業務プロセスや情報管理体制などの検証・評価を進めて」いたのだという。
本件は証券取引等監視委員会による調査中であることから、調査に影響を及ぼすことがないように進めることになるため、現時点において調査検証委員会の調査完了時期は未定としているが、来年は取引所当事者ならびに監督官庁自身が、不正事案対処について全上場企業の模範となる対応をとることが出来るのかを問われる重要な1年となることだけは間違いない。
改善、あきらめました。
資産価値が低下した不動産を取得し、デザイン性や利便性、セキュリティ、環境配慮などを施して再生し、投資家や個人、ファンドなどに販売する不動産再活事業を展開してきた当社は2023年、外部からの指摘により、過去の取引に関連して、貸付債権に係る貸倒引当金の計上、「支配株主等に関する事項」の要訂正、循環取引の可能性等に関する疑義等が判明。
こうした状況を踏まえ、当社は社外調査委員会を2023年7月に設置し、それらの疑義に対する調査を実施した。
この調査の結果、信託受益権の売買取引が経済的実質を伴わないため、これを営業取引として扱うべきでなく、売上計上はできないとの指摘を受けたことで、過年度決算を訂正。
それを受け、金融庁はこの売上過大計上および関連当事者情報の記載にかかる不備について2,100万円の課徴金納付を命令。
日本取引所も適時開示の規定に違反したとして、当社に2,880万円の上場契約違約金の徴求ならびにを特設注意市場銘柄の指定を行うこととなった。
日本取引所は当社の内部管理体制について、社長主導の複数の不動産売買が、当社の大株主により実質的に支配されている合同会社を相手方とする取引であったにもかかわらず、当該不動産売買に係る適時開示資料において資本関係および人的関係がない相手方との取引である旨を記載するなどの上場規則違反を認定。
さらには、過去2009年に特設注意市場銘柄への指定(1回目)を受けて策定された再発防止策について、特設注意市場銘柄の指定解除後、時間が経過する中で、その運用等に複数の不備が認められる状況が生じていたものの、経営陣はこれらを是正するための十分な対応を行っていなかったなど、不正防止のための牽制体制が適切に機能していなかったとも指摘し、当社の内部管理体制等について改善の必要性が高いとした。
そうして再び内部管理体制等の改善を要求された当社では、代表取締役および取締役S氏の辞任を発表。
社外調査委員会の調査報告書の提言内容を厳粛に受け止め、責任の明確化を図るため役員報酬の減額を行った。
当社の内部管理体制の改善計画においては、さすがに2度目ということもあって日本取引所から当社の現取締役が「従業員として残留することも適切ではないのでは」として、役員全般の完全退場を示唆されてきたという。
また、改善計画策定においてさらなる原因分析の一環として、5年以上前の適時開示の妥当性に関する調査が必要であるとも示唆されたとしている。
しかし、こうした日本取引所自主規制法人からの暗黙の要求に対して、当社側は「5年以上前の適時開示の妥当性に関する調査は、当時の役職員の多くが退任・退職し、当時の資料も限られるため、十分な調査を実施できない状況」であり、かつ、「上場会社の内部管理体制として当該指摘自体の必要性は理解するものの、他方で、当社がメインとする不動産の権利調整等は現取締役の属人的な人脈やノウハウに大きく依存しているところ、現取締役と同等の人脈やノウハウを有する者を確保するのは容易でないと想定され、これらの人脈やノウハウを標準化する前に現取締役が早期に退任すると当社は事業継続することができなくなる」と本件開示で反論。
当社は約 20 名の少人数で運営しているため、内部管理体制の改善に向けて必要な改善計画の策定のために大半の人的資本が割かれており、本来注力すべき事業活動に人的資本を投下できずに「当社の事業継続自体が困難となることに直結する事態である」と判断した結果、当社としては、当社の存続を図るために改善計画の策定・公表を断念することを発表。
本件開示はあまり例を見ない事実上の上場廃止「容認」宣言となった。
ネット界騒然のランサムウェア被害を越えて
世界的にランサムウェアを利用した大規模なサイバー攻撃が猛威を振るった2024年、中でもその日本国内最大の被害として記憶に残るのが、本件「KADOKAWA」に対するサイバー攻撃である。今回ノミネートされたのは、システム障害発生から18日経過した段階での適時開示。
2024年6月8日(土)未明に当社グループの複数のサーバーにアクセスできない障害が発生。早急に社内で分析調査を実施したところ、ニコニコを中心としたサービス群を標的として、当社グループデータセンター内のサーバーがランサムウェアを含む大規模なサイバー攻撃を受けたものと確認されたという。
これを受けて当社は被害の拡大を防ぎ、データを保全するために直ちにデータセンター内のサーバーをシャットダウンするなど緊急措置を講じ、データセンターを共有している当社グループ内の他サービス(ウェブサイト)のみならず、事業活動や経理機能を管理する基幹システムの一部も機能停止させることとなった。
その後はハッカー側から犯行声明も出され、影響は長期化。「ニコニコ動画」系サービスは2ヶ月近く完全停止することとなり、オンライン上の影響のみならず、既刊出版物の製造出荷も平常時の1/3程度に落ち込むなどの大きな被害となった。
一方で、障害対応と同時に影響を受けたシステムの再構築を並行で進めた。アナログでの業務管理も行いながら新刊の製造出荷や、売上構成比に占める割合の大きいグッズ品目の販売については平常時出荷に近い水準を維持した。
その成果もあって当社グループ連結の1Q売上高は前年同期比11.9%増、同営業利益も84.5%増とするなど、当社の大ピンチを全社的に乗り切るカタチとなったが、サイバー攻撃に係るサービス停止期間中のニコニコサービスのクリエイター補償および調査復旧費用など「システム障害対応費用」約20億円を特損計上(通期見通しは約36億円)。ランサムウェア被害の爪痕は大きかった。
ドワンゴからのリリースによると、本件被害の発生原因としては「社外の大手セキュリティ専門企業の調査によると、現時点ではその経路および方法は不明であるものの、フィッシングなどの攻撃により従業員のアカウント情報が窃取されてしまったことが本件の根本原因であると推測」されるという。
こうした、従業員に対するランサムウェア利用は、日本中のあらゆる組織が頭を悩ませているサイバー攻撃手法であったため、本件に対する当社の初動や対応については社会的関心も大きかった。
当社は攻撃者の遠隔操作に対抗するため、データセンター内にあるサーバーの電源ケーブル、通信ケーブルを物理的に抜線するという対応を実施。また、社内業務システムも停止させるだけでなく、ドワンゴ従業員のオフィス出社も原則禁止とするなど思い切った被害拡大策をとり、他社のインシデント対応でも参考事例となった。
他方で、攻撃側も窃取した社内外の25万件を超える個人情報などを、ダークウェブを介して世界中に拡散させるなど、身代金要求による揺さぶりを重ねた。
この身代金交渉の過程で、そのやりとりの内容を外部のニュースアプリサイトが報じ、そのサイトの行動に批判と擁護の声が寄せられるなどネットメディア界を騒がせる一件となった。
また、興味本位でダークウェブにアクセスし、個人情報の拡散に安易に加担してしまう一般SNS ユーザの発生も話題に。こうした行為に対しては当社も法的措置をとる旨を公表している。