今年いちばん記憶に残った適時開示を決めよう

「適時開示アワード2024」 最終結果

 「適時開示アワード」実行委員会は、今年「最も人々の記憶に残った適時開示情報」に、野村ホールディングス(8604)「当社元社員の逮捕について」を選定しました。

 「適時開示アワード」はことし開示されたすべての適時開示情報等の中から、不特定多数による投票により「最も人々の記憶に残った適時開示情報等」を選定する、今年度で12度目の開催となるイベントです。

 

 今年の適時開示アワードは大型金融機関職員による凶悪犯罪や金融当局内部職員によるインサイダー疑惑など、各機関の情報開示体制および内部不祥事への事後対応に大きな不信感が生まれる最中のコンテストとなりました。

 

 本年の大賞に選出された野村ホールディングス(8604)「当社元社員の逮捕について」は、厳密には「適時開示情報」にはあたりませんが、そのこと自体も、法人が有する情報を当時の従業員が利用して行った犯罪の卑劣さに対して野村HD側からの情報発信があまりに少なく、事後対応も後手後手にまわったことを象徴しているとの評が相次ぎました。

また、当社が2024年11月14日に公表した「半期報告書」内の「事業等のリスク」において、「役職員または第三者による不正行為や詐欺その他の犯罪により、野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります」との記述が登場しており、「野村の役職員が、上限額を超えた取引、限度を超えたリスクの負担、権限外の取引や損失の生じた取引の隠蔽、顧客に対する犯罪行為や違法行為等の不正行為を行うことにより、野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります」と前代未聞の記載がなされたことも選者一同より「合わせ技一本」との評価を受けました。

 

 次点はENECHANGE(4169)の「外部調査委員会の調査報告書の公表に関するお知らせ」
こちらは同社の上場以後、業績が悪化し続ける中、実質的な内部取引を売上計上すべく画策してきた元CEO らによる不正経理問題に迫る調査報告書です。

選者からは「典型的な連結外しが現代でも生きている好例」「こちらはSPCを連結除外して売上を建てるスキームではあるが、日本版エンロン事件と言って差し支えない」などの評価がなされました。

 今年の「適時開示アワード」は2023年12月から2024年11月に開示された適時開示情報などを対象とし、第1フェーズで11社の適時開示を公募により選定。その後の最終投票の結果、野村ホールディングス(8604)の「当社元社員の逮捕について」を大賞に選定しました。

 その他の順位は以下となります。

最終
順位
開示資料名スコア
18604 野村ホールディングス 当社元社員の逮捕について13
24169 ENECHANGE 外部調査委員会の調査報告書の公表に関するお知らせ11
38697 日本取引所グループ 独立社外取締役による調査検証委員会の設置について10
49468 KADOKAWA KADOKAWA グループにおけるシステム障害及び事業活動の現状について5
55856 エルアイイーエイチ ガバナンス委員会の答申書受領のお知らせ3

 以下では、今年のトップ5に選ばれた作品を、投票者さまによるコメントとともにご紹介して参ります
また、ノミネートされた全作品につきましては、次のリンクをご参照ください。

 

「適時開示アワード2024」 年間大賞

8604 野村ホールディングス 当社元社員の逮捕について

 

客先に「強盗」「放火」 後手後手の事後対応に批判

(当リリースは適時開示されていません。)

当社は2024年11月6日、「当社元社員が強盗殺人未遂、現住建造物等放火の容疑で広島県警察に逮捕」されたとするニュース・リリースを発表した。

リリース上では具体的な言及はないものの、各社報道をまとめると、この元社員は2024年7月28日に、自らの顧客であった80代の夫婦に睡眠薬を飲ませて住宅に放火(殺人の意図はないと主張)。放火事件の以前も含めるとこの夫婦から合計約2600万円の現金などを奪っていたとみられており、折しも「広域強盗」に日本列島が恐々とする時代に、証券会社の社員が自らの顧客を襲撃するという悲惨な事件に日本中が衝撃を受けた。
当該元社員はすでに当社から懲戒解雇されている。

 

前述のリリースによると当社は、「2024年11月5日よりウェルス・マネジメント部門の営業企画担当執行役員を広島支店に派遣し、現地での対応を強化」したのだという。
これから「より厳格かつ実効性のある管理運用体制の構築を進め」る一環で、「当面の間の措置として、ウェルス・マネジメント部門の社員によるお客様のご自宅への訪問については事前承認のルールを導入」したとしていたが、その実効性に疑問の声も聞かれた。

それだけではなく、当社の後手後手の対応にも批判が寄せられた。
元社員が逮捕されたのは2024年10月30日。当社の名を冠する逮捕報道が行われたのも同日であり、2024年11月1日に行われた決算発表の会見では本件事件に関する質問が記者からなされており、当社CEOもその時点で状況を把握していることが明確であった。

 

さらに、Bloombergおよび朝日新聞の報道によると、この元社員は逮捕の約3ヶ月前である2024年8月2日の時点で「顧客の資金を盗んだ」と社内報告していたことを当社広報担当も把握しており、実際に元社員の懲戒解雇も2024年8月3日に行われていたことが記されている。(放火などについての申し出はなかったという。)
しかしながら、本件に関する当社からの情報開示がなされたのはその懲戒解雇の3ヶ月以上も後。実際に当社が「より厳格かつ実効性のある管理運用体制の構築」に向けてようやく動き出したのも同じタイミングであった。

こうした当社の消極的な情報開示体制に対する不信感も醸成されており、当社の中間決算は好調であったものの、今後の業績への悪影響が取り沙汰される。
その経営環境を踏まえ、当社が2024年11月14日に公表した「半期報告書」では「事業等のリスク」において、「役職員または第三者による不正行為や詐欺その他の犯罪により、野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります」との記述が登場。「野村の役職員が、上限額を超えた取引、限度を超えたリスクの負担、権限外の取引や損失の生じた取引の隠蔽、顧客に対する犯罪行為や違法行為等の不正行為を行うことにより、野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります」と記載した。

当社ではこの他にも社員の不審な行動が確認された場合には、顧客から当社お客様相談窓口(0120-763-123)またはWEB相談窓口で相談するよう依頼している。

 

選んだ人のコメント

  • 「やはり野村経営陣の対応が後手すぎる。何万人もいるイチ社員が起こした凶悪事件よりも、それを知りながら公表を先延ばしして来た同社の体質に懸念を覚える。大タブ小タブの時代であれば、即日公表していたのではあるまいか。いずれバレる凶悪な事件の公表を先延ばしして来た同社の姿勢は、今後同社に芳しくない影響が出て来るものと思わざるを得ない。」(なごや さん)
  • 「(当リリースは適時開示されていません。)←この時点で年間大賞受賞が約束されたものだが、半期報告書で「役職員または第三者による不正行為や詐欺その他の犯罪により、野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります」と前代未聞の仰天開示を行ったことが今年の大賞受賞を決定づけたと思います。」(匿名さん)

 

「適時開示アワード2024」 2位

4169 ENECHANGE 外部調査委員会の調査報告書の公表に関するお知らせ

 

前CEOらによる「連結隠し」 舞台はSlack上

当社は2020年12月にマザーズ上場した会社で、電力自由化の機運に乗じて電力切替プラットフォームの提供を開始し、エネルギープラットフォーム事業とエネルギーデータ事業を展開していた。

当社CEO の輝かしい鳴り物入りで上場を果たしたものの、それ以降は一度も黒字を計上したことがないまま、2022年12月決算では自ら「トンネル」と呼ぶほどの連結純資産の1/4を超える大赤字を計上。当社の社外・執行役員を含む役員の報酬体系にも株価連動性が高く設定され、翌期で業績を大幅に改善しなければならないインセンティブが経営陣に強くはたらいていた。

そうした中で当社は2023年度について「満充電で再スタート」と題し、新規事業と銘打たれた「EV充電事業」を展開することを株主に誓う1年と設定。
早期黒字化への道筋をつけられるよう、このEV充電事業の一刻も早い業績寄与が、経営陣にとっての至上命題となっていた。

 

調査委員会の認定によれば、この過程でCEO はこのEV 充電事業によって、当社の子会社であるEV ラボが販売するEV 充電機器等の代金および工事代金や、当社が受け取る運営受託料などの収入を売上計上できるような取引先を必要としていた。
だが新規事業ゆえ、そのような外部候補先はすぐには開拓できず、結局は身内に近い取引先に本件事業スキームへの取引参画を求めていった。

その際にCEO らも あずさ監査法人と打ち合わせを繰り返していくものの、それらの取引先候補があまりに身内すぎて、EV 充電事業における販売行為等が実質的な内部取引にあたる可能性が高く、売上や未実現利益の計上が困難であることを知っていく。この事情により、彼らは当社からすれば身内すぎる取引先を、連結に含めずに済むようなスキームづくりを目指していくこととなった。


そこでCEO は、創業以前より世話になっていたX 氏の他、M 社とN 社の3 者からSPC (特別目的会社)へ出資をしてもらうカタチで、当SPC を本件売上先として確保。その過程でCEO や当社CFO および執行役員などは、このSPC の実質的意思決定に当社が関わっていることを示す可能性のある情報を、当社取締役会や会計監査人には一切伝えなかった。(一方、調査委員会はこれを「隠蔽していた」とまでは認定しなかった。)
その結果、当社グループがこのSPC らから収受するEV 充電機器等の売買代金、工事代金及び運営受託料を、当社グループの連結財務諸表において、一旦は売上計上が認められることとなる。

 

しかしその後、このSPC の最大出資者による出資が完了したことを踏まえ、あずさは2023 年度通期の監査手続において当SPC における意思決定の状況を確認する最中、2024年2月に本件会計処理に関する外部通報を受け、X 氏による当該SPC への出資時に、その出資額の半額をCEO がX 氏に貸し付けていた事実などを掴んでいくこととなる。
これを受けてあずさ側は常勤監査役に対し、X 氏との間で、X 氏に影響力を及ぼし得るようなサイドレターが存在しないか等を確認する目的でのデジタル・フォレンジックの申入れを行うなどし、最終的には本SPC を当社の連結範囲に含めるべきであるとの結論に至り、当社取締役会において必要な情報が十分に共有されていないなどの内部統制上の問題があるのではと指摘。このSPC が連結対象に含まれた結果、当社は一時的に債務超過に陥ることとなった。

そうして設置された本件調査委員会も当該デジタル・フォレンジック前後においてCEO らが不都合なSlack 投稿を一度は削除するなどの不適切行為等を確認。
最終的に当社において、CEO を牽制できる役割をもった執行側の人材や部署が十分に機能しているとは言いがたく、社内の法務コンプライアンス態勢が脆弱であり、会計監査人とのコミュニケーションが不十分であったことなど内部統制の問題を指摘した。


その後、CEO はこれらの責任を取って退任することとなり、現在、当社では経営体制の立て直しを図っている最中だが、この元CEO が保有する株式に他の上場会社から突如、質権設定が行われるなど、経営をめぐる混乱は長期化しそうだ。

選んだ人のコメント

  • 「典型的な連結外しが現代でも生きている好例。監査法人は第三者委員会調査結果を利用し同方向の結論とする場合が多いですが、踏み切らない調査報告書に対して監査法人が独立した意見をあげた点はとても良いケースになったと思います。」(匿名さん)
  • 「本家はSPCを連結除外してデリバティブの損失を飛ばすスキーム、こちらはSPCを連結除外して売上を建てるスキームではあるが、日本版エンロン事件と言って差し支えない。」(ECONOPUNK さん)

 

「適時開示アワード2024」 3位

8697 日本取引所グループ 独立社外取締役による調査検証委員会の設置について

 

職員に不正取引容疑 当局自身は「適時」開示できるのか?

「東証社員インサイダー疑惑」

2024年10月23日にタイムラインを駆け巡ったのは、市場を司る「東京証券取引所」の職員の親族による「インサイダー取引」容疑の報道。
この報道の数日前には金融庁に出向していた裁判官によるインサイダー容疑も報じられるなど、今年は「市場の番人」に対して証券取引等監視委員会がメスを入れる事例が相次いだ。

各社の報道によると、捜査対象者は東京証券取引所の「上場部開示業務室」に所属する20代の社員。しかも不正取引に利用されたのはTOB 等の情報を含む「他社の未公開情報」。
入社数年と勤務歴は浅いものの、自身で取引は行わず、親族に重要事実を伝達し、株取引を推奨した可能性があるという。現在のところ、報道ベースでは社員の親族が複数の会社の未公開重要情報を利用して600~700万円以上の利益を得ていた可能性があるという。


もちろん、当社内では社員に対して、入社時のみならず、以後も事あるごとにインサイダー取引に関する研修を行ってきている。
その上、「上場部開示業務室」に所属する際には当然に、より入念な研修プログラムが用意されているはずだ。

それにもかかわらず今回露呈した社員のインサイダー取引疑惑を発見したのは当社自身ではなく、外部の証券取引等監視委員会という体たらく。
ある識者は、開示業務室が扱う他社の情報があまりに利用価値が高すぎて、たとえ社員自身の情報端末の持ち込みなどを禁止したところで、価値の高い未公開情報ほど記憶に残ってしまう点を指摘している。知っちゃうと喋りたくなるのが人間なのよね。


こうした事案に対して、当社の内部管理体制は脆弱なのではないか、また、こうした重要な会社情報の発生に対して、他社に「直ちに有価証券上場規程にのっとった適切な開示を行う」べしと指導する側である当社自身の情報開示は適切なのかといった点が明確に問われている。

その後者について、当社がとった適時開示は現時点で2つであり、1つは報道が出た当日に開示された本件「本日の一部報道について」。
このリリースでは、報道内容について「東京証券取引所の社員が証券取引等監視委員会の調査を受けていることは事実であり、当社グループといたしましては、引き続き、調査に全面的に協力してまいります」と述べるに留まっている。

そして、もう1つの「独立社外取締役による調査検証委員会の設置について」はその6日後の適時開示であり、こちらについては報道直後のリリースでは一切触れていなかったものの、2024年9月27日の時点ですでに本件事案に関連して、「独立社外取締役による調査検証委員会」を設置し、社員への教育研修体制、業務プロセスや情報管理体制などの検証・評価を進めて」いたのだという。


本件は証券取引等監視委員会による調査中であることから、調査に影響を及ぼすことがないように進めることになるため、現時点において調査検証委員会の調査完了時期は未定としているが、来年は取引所当事者ならびに監督官庁自身が、不正事案対処について全上場企業の模範となる対応をとることが出来るのかを問われる重要な1年となることだけは間違いない。

 

選んだ人のコメント

  • 「職員自身がインサイダー取引をしていたという驚きだけでなく、調査検証委員会の立ち上げという重要な情報が即座に開示されなかったことに驚いた。「適時」とは…?」(セロン さん)
  • 「適時開示の本丸として上場会社に対し時には厳しい対応を迫る同社の社員がインサイダーで逮捕されるのは、正直驚いた。未公開情報の魔力に屈しないよう注意しないといけないと身が引き締まる思いを感じた。」(にわとり さん)

 

「適時開示アワード2024」 4位

9468 KADOKAWA KADOKAWA グループにおけるシステム障害及び事業活動の現状について

 

ネット界騒然のランサムウェア被害を越えて

世界的にランサムウェアを利用した大規模なサイバー攻撃が猛威を振るった2024年、中でもその日本国内最大の被害として記憶に残るのが、本件「KADOKAWA」に対するサイバー攻撃である。今回ノミネートされたのは、システム障害発生から18日経過した段階での適時開示。

2024年6月8日(土)未明に当社グループの複数のサーバーにアクセスできない障害が発生。早急に社内で分析調査を実施したところ、ニコニコを中心としたサービス群を標的として、当社グループデータセンター内のサーバーがランサムウェアを含む大規模なサイバー攻撃を受けたものと確認されたという。

これを受けて当社は被害の拡大を防ぎ、データを保全するために直ちにデータセンター内のサーバーをシャットダウンするなど緊急措置を講じ、データセンターを共有している当社グループ内の他サービス(ウェブサイト)のみならず、事業活動や経理機能を管理する基幹システムの一部も機能停止させることとなった。


その後はハッカー側から犯行声明も出され、影響は長期化。「ニコニコ動画」系サービスは2ヶ月近く完全停止することとなり、オンライン上の影響のみならず、既刊出版物の製造出荷も平常時の1/3程度に落ち込むなどの大きな被害となった。
一方で、障害対応と同時に影響を受けたシステムの再構築を並行で進めた。アナログでの業務管理も行いながら新刊の製造出荷や、売上構成比に占める割合の大きいグッズ品目の販売については平常時出荷に近い水準を維持した。

その成果もあって当社グループ連結の1Q売上高は前年同期比11.9%増、同営業利益も84.5%増とするなど、当社の大ピンチを全社的に乗り切るカタチとなったが、サイバー攻撃に係るサービス停止期間中のニコニコサービスのクリエイター補償および調査復旧費用など「システム障害対応費用」約20億円を特損計上(通期見通しは約36億円)。ランサムウェア被害の爪痕は大きかった。


ドワンゴからのリリースによると、本件被害の発生原因としては「社外の大手セキュリティ専門企業の調査によると、現時点ではその経路および方法は不明であるものの、フィッシングなどの攻撃により従業員のアカウント情報が窃取されてしまったことが本件の根本原因であると推測」されるという。

こうした、従業員に対するランサムウェア利用は、日本中のあらゆる組織が頭を悩ませているサイバー攻撃手法であったため、本件に対する当社の初動や対応については社会的関心も大きかった。
当社は攻撃者の遠隔操作に対抗するため、データセンター内にあるサーバーの電源ケーブル、通信ケーブルを物理的に抜線するという対応を実施。また、社内業務システムも停止させるだけでなく、ドワンゴ従業員のオフィス出社も原則禁止とするなど思い切った被害拡大策をとり、他社のインシデント対応でも参考事例となった。

 

他方で、攻撃側も窃取した社内外の25万件を超える個人情報などを、ダークウェブを介して世界中に拡散させるなど、身代金要求による揺さぶりを重ねた。
この身代金交渉の過程で、そのやりとりの内容を外部のニュースアプリサイトが報じ、そのサイトの行動に批判と擁護の声が寄せられるなどネットメディア界を騒がせる一件となった。
また、興味本位でダークウェブにアクセスし、個人情報の拡散に安易に加担してしまう一般SNS ユーザの発生も話題に。こうした行為に対しては当社も法的措置をとる旨を公表している。

選んだ人のコメント

  • 「国内のサイバー攻撃被害として未曽有のものともいえる事例からどのようにリカバリーしたのか、その一連を残した貴重な記録であると感じる」(えび さん)

 

「適時開示アワード2024」 5位

5856 エルアイイーエイチ ガバナンス委員会の答申書受領のお知らせ(1/2) および(2/2)

 

16ページを超える「異常」な暴言集

現在の社名よりも旧「東理HD」と言った方が界隈に伝わる当社は、元社長が、経営状況を無視して自身の報酬を増額することを要求し、当社の取締役会の承認がないままに当社から個人名義の銀行口座等に多額の金銭を送金させ、取締役会の承認を得ずに多額の経費を支出し、さらに、他の取締役に対して度重なる罵倒、暴言などパワーハラスメントととられる言動を行うなど、当社の円滑な業務執行の妨げとなっていることなどを理由として、2024年9月に取締役会の任意の諮問機関として「ガバナンス委員会」を立ち上げた。

本委員会は当社と利害関係のない独立した外部専門家とする委員で構成され、取締役会の諮問に応じて元社長による上記の「問題行為」に関する事実調査ならびにその結果としての取締役会としてのコーポレート・アクションに関する提言などを行う目的で立ち上げられたが、その元社長に関してはすでに2024年8月23日付けで、当該「問題行為」により取締役会がその職を解職する決議を行っていた。

 

調査の結果、ガバナンス委員会は元社長による取締役会の承認を経ない自己の報酬増額および流出行為について、善管注意義務及び忠実義務違反により1億2,000万円の返還義務を認め、取締役会の承認を経ない12億円の資金移動(うち2億円は着服)行為についても特別背任罪が成立し得ると指摘。
また、その他の取締役会の承認を経ない経費支出についても、同様に損害賠償責任が認められる可能性があるとした。

今回、この適時開示が何よりもウォッチャーの心を踊らせたのは、別紙に登場する元社長の「経営者としての人格の異常性」を表現する、パワーハラスメントを越えるほどの悪質な人格攻撃や脅迫行為を含んだ「暴言」の数々である。
特に、元社長からの資金流出要求の数々と対峙してきた当社の経理部長に対する”口撃”は凄まじいもので、パワハラ社長による「犯罪行為」というべきレベルの役職員に対する暴言集は、社長解職前後たった2ヶ月の「語録」にもかかわらず報告書2分冊目(2/2)の終盤「別紙」で16ページ以上にわたって展開された。


その暴言は「株が買えなくした事の株式での損害をメインに損害賠償請求をさせて貰う 40 兆円の株を買うチャンスを失った損害賠償は何兆単位の損害賠償請求になると思う」「XXX法律事務所にXXXXを使って 40 兆円の資金を使って何十兆円の利益を得られる機会を失ったから逮捕してくれと頼むから覚悟しとくように」といった、資金流出を阻止されたことへの謎すぎる皮算用を中心に、「俺は今や検察庁長官に指示するポジションになった」「お前の家に丸の内刑事を連れていき引っ張って送金させる」「刑事ではなく、検察を呼ぶ」「俺には神様さまがついていっらしゃる」「俺は全てのテレビ局を買収しているから真実を伝えるのに何でもできる」「お前の取るに足らない頭脳で世界一天才の神に使える俺に勝てるわけがない」(すべて原文ママ)などといった妄想に終止し、ガバナンス委員会いわく「阿呆、犯罪者、バカ、能無し、地獄で悶え苦しむ、死ね、仕事できない、能のない、能力がない、人間のクズ等の精神的な攻撃と言える発言」を繰り返す、ただ読んでるだけでも頭痛がする程の異常な不規則発言のオンパレード。

報告書1分冊目(1/2)でも、経理部長らが管理する通帳を使わずに資金を流出させるために画策する元社長との虚しい戦いを余儀なくされ、元社長の度重なるパワハラとコーポレート・ガバナンスとの狭間で奮闘する経理部長の姿には涙を禁じ得なかった。

 

ガバナンスの無い世界で経理部長の職を適切に執り行うことというのは、かくもハードなことなのだという事実を認識させられる一方、2024年11月14日提出の半期報告書では依然として元社長と同姓の大株主とで合計4割の当社株式を有している状況は何ら変わっていない。

選んだ人のコメント

  • 「「俺は今や検察庁長官に指示するポジションになった」、「世界一天才の神に仕える俺」、「俺には神様がついていらっしゃるからなあ!アー大変なことになった!」等々、もはや世界観めいたものすら感じさせるユニークな暴言フレーズの数々を世間にさらされながらも、一顧だにすることなく臨株で戦おうとしている姿に、人間の自意識はどこまで肥大化し得るのか、恐ろしさを感じるとともに、こういう大株主であってもむやみに排除できない株式会社制度の哀愁を感じた。」(匿名 さん)

※コメントいただいた皆様、いつも誠にありがとうございます。引用させていただきました選者コメントからのリンクを希望される方は、「適時開示アワード」公式X までその旨をお伝え下さい。

この記事を書いた人
その年で「最も印象的」だった適時開示資料をみんなで決めています。 サーバを移転しました。2022年以前の適時開示アワードは discloawards.com/開催年/ でご覧いただけます。
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